8. 要塞からの脱出 Trenches Of Hell

作品について

このエピソードは「ヤング・インディ・ジョーンズ・クロニクルズ」の第8話として放映された「1916年 8月初旬 ソンム」と、第9話として放映された「1916年 8月上旬 ドイツ」を組み合わせ、1つのエピソードとして再編集した作品である。

ソンム編、ドイツ編は共に日本でも1992年初頭に「インディ・ジョーンズ 若き日の大冒険」と称したシリーズでテレビ放映されたことがあり、ビデオ、LD-BOX、文庫本が発売されている(いずれも既に絶版)。また、チャプター8として再編集された後の作品もビデオ化されている(国内版は既に絶版)。

なお、ソンム編とドイツ編にそれぞれ含まれていた1990年代の老インディのセクションはカットされている。もともとこの2つのエピソードは連続したストーリーになっているため、再編集も両者を単純に繋げただけである。

ストーリー

1916年 8月初旬 ソンム Somme - Early August 1916

インディとレミはフランダースに展開するベルギー軍の一員として、初めての戦いに参加した。彼らの部隊の士官は全員戦死したため、残りの兵士たちはソンムへと転属させされ、フランス軍に加わることになる。当時、ソンムの戦いはこれまでの実戦でもっとも凄惨な戦いの1つであり、100万人以上の兵士(イギリス人、フランス人、ドイツ人)が死亡したとされている。特にイギリス軍はドイツ軍の6倍の兵員を擁していたにも関わらず、1日でおよそ6万人を失ったのだった。また、イギリス軍が戦車を初めて実戦投入したのも、この戦いからである。

伍長のインディは彼の所属する部隊で最高位の兵士となっていた。そのため、彼の部隊はフランス軍から士官を受け入れることになるが、フランス軍の指揮官はベルギー軍を厄介な存在としか思っておらず、自軍の中尉を進んで貸し出すことなど望んではいなかった。そこで彼は、苦肉の策としてモロー軍曹を中尉に昇格させ、インディの部隊に指揮官として転属させる。しかし、モローはすぐにベルギー兵の1人、ジャックスという名のトラブル・メーカーに嫌悪感を抱くようになった。インディも、ジャックスが前指揮官を殺害した疑いがあるとモローに告げる。その後もジャックスはトラブルを引き起こそうとするが、モローの前では手を引くのだった。

メゾネット城を奪回するという命令が下され、ベルギー部隊が先陣を執ることになる。攻撃は予定通りに開始されたが、兵士たちは敵からの機銃掃射を受け、すぐに退避所へと追いやられてしまう。だが、インディとモローは最も砲手に近い敵に向けてなんとか手榴弾を投げ付け、彼らに激しい機銃掃射を止めさせることに成功する。その後も戦いは続き、兵士たちは最初の塹壕でドイツ兵と接触すると、白兵戦を開始した。彼らは塹壕を確保するため迅速に行動するが、モローが受け取った伝令によると、彼らは塹壕にたどり着いた唯一の部隊だというのだ。このとき、ジャックスとインディが喧嘩をはじめるが、モローによって制止されてしまう。

ドイツ軍の毒ガス攻撃が行われたとき、兵士たちは第2段階の攻撃に備えて準備している最中だった。インディとレミは、先の攻撃で防毒マスクを紛失した僚友が恐怖に喘いで死んでいく様を、成すすべなく見届けることになる。戦場に不気味な沈黙が訪れた。その後、ドイツ兵は恐ろしい新型兵器、火炎放射器を携え、ガスの霞みのなかをゆっくりと前進しはじめる。ベルギー軍は自分たちの塹壕にまで撤退し、攻撃は完全に失敗に終わったのだった。

インディの部隊に2日間の休暇を与えるという命令が下された。彼らは近くの町へ向かい、水浴びや洗濯をしてくつろいだ。インディは仲間と共にイギリス人兵士のペアにテニスの勝負を挑むが、負けてしまう。ゲームの後、インディはその2人のイギリス兵、ロバート・グレイブズ中尉とシーグフリード・サスーン中尉とワインを飲み、文学について議論した。サスーンはイギリスの実業家たちが戦争をわざと長引かせ、そこから利益を得ていることにうんざりしていた。だが、彼曰く、それが自分の任務であるために戦い続けているのだという。

休暇が終わり、前線に戻ったベルギー軍は、メゾネット城に対する新たな軍事作戦について知らされる。攻撃が開始され、彼らは容易に最初の塹壕を確保した。インディはジャックスに、モローが彼に対して上官殺害の疑いを持っていることを告げる。そして、彼らは第2の塹壕へ向かうが、そこは無人だった。しかし、次の作戦を続けようとしたとき、彼らは機銃掃射を受け、足止めされてしまう。モローはドイツ軍の砲手の側面に回り込むため、放棄されたドイツ軍のトンネルを使おうと決意する。モローの友人であり副官のギスカール軍曹、インディ、ジャックスの3人がトンネルに侵入し、ドイツ兵による攻撃を受けるが、インディは敵に接近して銃剣で刺殺することができた。そしてトンネルを抜けたときにも、敵の機関銃の群れが待ち構えていたが、彼らはそれを手榴弾で一掃することに成功したのである。

部隊の残りも集結し、彼らはメゾネット城を占領した。だが、撤退するドイツ兵の攻撃によって、ギスカール軍曹が殺されてしまう。その後も増援部隊は到着せず、モローは不安を抱いていた。兵員は30名しか残っておらず、このまま城を確保し続けることは不可能だったのだ。そのとき、ドイツ兵が警告なしで奇襲を行い、モローが射殺される。混乱のなか、インディはレミが負傷したことを知るが、彼のところまで行くことができなかった。そして、攻撃を仕掛けてきたドイツ兵からジャックスがインディを救う。このときインディは、上官を殺したのがジャックスではなかったことを確信するが、ジャックスは命を救ってもらったくらいで友人だと思うなと警告する。だが、ジャックスは次の瞬間に敵の銃弾に倒れるのだった。ドイツ軍が一斉に城へ侵入し、ベルギー軍は撤退を強いられる。だが、インディは脱出することができず、敵の捕虜となるのだった。

1916年 8月中旬 ドイツ Germany - Mid-August 1917

インディは捕虜収容用エリアへと連行され、そこで同じ部隊出身のエミールと出会う。捕虜収容所では階級の高い人間ほど扱いが丁重になることから、エミールは死んだフランス軍兵士の軍服を着ており、インディも戦死した士官の服を拝借して、ブラン中尉の身分を偽装するのだった。また、インディは他の捕虜たちの中からレミを探そうとするが、見つけることはできなかった。

捕虜たちが移送されようとしていたとき、連合軍による砲撃が開始された。この混乱に乗じてインディとエミールは逃走を試みるが、不運にも彼らは意図せずドイツ兵がひしめく塹壕に隠れてしまう。2人はあっさり捕らえられ、収容所に連れ戻されるのだった。

捕虜収容所に到着したインディとエミールは収容所内を歩き回り、施設の配置を確認していた。すると、ある捕虜の1人がフェンスの近くでボールを蹴っており、それを探そうとした際に、衛兵から威嚇射撃を受けていた。男は偶然によるアクシデントだと主張し、インディもそれを弁護する。彼はインディとエミールに、ジェイシーズ・ベネット大尉だと自己紹介すると、脱走を計画してるフランス人将校たちの会合に2人を招待するのだった。将校たちは脱走用のトンネルを掘っていたが、トンネルを内側から支える板が不足しており、また掘った土を隠す場所がないという問題に直面していたのだ。ベネットは一晩で一気にトンネルを貫通させてしまおうと提案する。彼らはそれに同意し、インディとエミールも手伝うことになるのだった。

フランス人捕虜たちは一度外までの距離を誤算するが、最終的にトンネルを完成させることができた。だが、彼らが脱走の準備を進めていると、収容所の指揮官が抜き打ち検査に現れる。危うくトンネルが見つかりそうになったが、指揮官がベネットの挑発で気をそらしたため無事だった。ベネットは仲間を脱走させるために自らを犠牲とし、独房へ入れられることになる。そして、残ったフランス人たちはトンネルを通って次々と脱出していった。インディとエミールも最後尾でフェンスの外までたどり着くが、外に出た瞬間にドイツ兵に発見されるてしまう。エミールはその場で撃たれ、インディは再び収容所へと連れ戻されるのだった。

ドイツ人はインディをブラン中尉として認識していたが、その人物には以前にも他のドイツ軍収容所からの5回の脱走経験があるという。そのため、彼らはインディを決して脱出不可能なインゴルシュタットと呼ばれる収容所へと移送することを決める。インゴルシュタットはライン川中域の岩の多い島に位置する古城だった。そこはまさしく矯正不可能な囚人のための場所だったのだ。

到着したインディは他の捕虜たちに紹介されるが、彼らはインディをドイツ人のスパイではないかと疑っていた。だが捕虜の1人でここのリーダー格であるシャルル・ド・ゴール大尉は、インディの訛りのあるフランス語から彼がアメリカ人であることを見破る。インディは取り乱し、ブラン中尉の身分を装った経緯について、一部始終を彼らに告げるのだった。やがて捕虜たちはインディを仲間として受け入れることになる。すると郵便物が届き、捕虜たちは故郷からの荷物や手紙を奪い合うようにして喜んだ。その後、2人のロシア人捕虜、ユーリとレオニードが必死に小包の紐を集めはじめる。仲間たちは彼らを変わり者として見ていたが、2人は紐を集めるのがロシアの古い迷信なのだと説明するだけだった。

翌日、インディは診療所担当のイギリス兵、ランバート伍長と会い、ド・ゴールを交えて変わり行く戦争のあり方について議論を交わす。そして夜になって部屋に戻ると、彼はユーリとレオニードに呼び止められ、本物のアメリカン・カウボーイのような投げ縄ができないかと尋ねられた。彼らは独自の脱出計画を持っており、それを実現するためにインディの助けを必要としていたのである。ロシア人たちは集めた小包の紐でロープを作り、それを脱出に使おうと考えていたのだ。インディは懐疑的ではあったが、とりあえず協力すると請け合うのだった。

翌日の夕方、インディはロシア人たちと合流する。彼らの計画は城と隣接する建物の屋上にある尖針部分に、手製の投げ縄を引っ掛けて脱出するというものだった。インディがロープを投げ、その後、彼らがそれを辿って壁の外側に待つ自由の世界へ渡るのだ。インディはうまくロープを尖針に掛けたが、愚かなロシア人たちは2人で同時にロープを渡ろうとしてしまう。その結果、過重に耐えられなくなったロープがちぎれ、2人は直下の川へと転落したのだった。翌朝、ドイツ軍の指揮官は囚人全員を中庭に集め、2人のロシア人の水死体に叱責する。彼はユーリとレオニードの死体が入ったバッグを全員への見せしめとするのだった。

その後、インディとド・ゴールは2人のロシア人の棺の中に入って脱走するという計画を企てる。彼らはランバートと2人の当番兵に計画の全容を打ち明け、協力を取り付けた。通常、捕虜に死者が出た場合、当番兵が棺を河岸の墓所まで運んで土葬することになるが、今回は当番兵が棺の上に1インチ程度しか土を掛けない手筈になっており、インディとド・ゴールは容易に脱出することができるのだ。さらにドイツ軍の衛兵は迷信を信じているため墓所には入ろうとせず、したがって中で何が起こっているか見られる心配もないのである。

当番兵が棺を河岸に運ぶまでは計画通りに進んだ。だがここで突然、衛兵から手続きの変更が告げられる。今回から死体は土葬ではなく、火葬にするというのだ。当番兵は棺をトラックに載せるだけで役目を終え、島に戻された。危機に気づいたインディとド・ゴールは、トラックが火葬場に到着する前にトラックから脱出し、郊外へと逃走する。夜明けまでには小さな街にたどり着き、そこで2台の自転車を盗むことができた。だが、2人はドイツ軍のパトロールに見つかってしまい、オートバイで追跡される羽目になる。ド・ゴールは逃走中に捕まり、再び島に戻された。だが、インディは走る列車の前を間一髪ですり抜け、追跡をかわすことに成功する。彼はそのままドイツ国境まで逃走し、ようやく自由を得たのである。

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