このエピソードは「ヤング・インディ・ジョーンズ・クロニクルズ」の第18話として放映された「1916年 4月 アイルランド」と、第2話として放映された「1916年 5月 ロンドン」を組み合わせ、1つのエピソードとして再編集した作品である。
ロンドン編は日本でも1992年初頭に「インディ・ジョーンズ 若き日の大冒険」と称したシリーズでテレビ放映されたことがあり、ビデオ、LD-BOX、文庫本が発売されている(いずれも既に絶版)。だが、アイルランド編および再編集によってチャプター7となった後の作品は海外でテレビ放映されたのみであり、現在でもビデオ化はされていない。
なお、アイルランド編とロンドン編にそれぞれ含まれていた1990年代の老インディのセクションは再編集の際にすべてカットされている。これにより、互いに老人となったインディとヴィッキーがニューヨークで偶然の再会を果たすという感動的なエピソードも封印されてしまった。また、チャプター18のことを考えると、シーモア先生が駅のホームでインディを見送るラスト・シーンも見逃せない。実はこれが2人にとっての今生の別れなのだ。
インディとレミはベルギー軍に入隊するためロンドンへ向かう途中、クイーンズタウンに立ち寄った。2人は列車でダブリンまで行き、そこから船に乗るのに必要な金を得るために仕事を探そうと計画していたのだ。そして、彼らはパプでの仕事を得ることができ、そこで給仕と皿洗いを行うことになる。ある日の午後、インディは自分たちの食糧を買うために外出し、あるレストランの窓の外を通りかかったとき、美しい2人の少女の姿を発見した。彼はさっそく中に入り、2人と同席する。少女たちはマギーとヌアラだと自己紹介した。すると、そこにマギーの兄、ショーン・ラマスが加わる。このときの会話から、少女たちはインディが大富豪であるという印象を得ていたが、彼は誤った認識を正そうとはしなかった。一方、ショーンはインディと、彼がパンチョ・ビリャと過ごしたときのことについて話すのだった。
レストランを出るとき、インディは街路を行進している人たちについて質問した。マギーの説明によると、彼らはイギリス支配の妥当を目指すアイルランドの義勇兵たちであり、ショーンもそのメンバーの1人だという。インディとマギーは翌日劇場で会うことを約束し、別れるんだった。その後、インディは彼とレミの滞在している部屋へと戻るが、レミはインディが自分たちの食費で少女たちにお茶とケーキをご馳走したことに激怒することになる。
翌日、インディは音楽ホールでマギーと再会する。会場の中でショーンとヌアラも合流し、インディはショーを、特にテノール歌手の歌う「アイルランド人の微笑み」を楽しんだ。その後、彼は言い訳をして仕事のために立ち去り、仕事中も「アイルランド人の微笑み」を独りで口ずさんでいた。すると客の1人、ショーン・オケイシーと名乗る作家がインディに嘲笑を浴びせかける。オケイシーは、アイルランド人を世界中で物笑いの種にした固定観念的な描写にうんざりしていたのだ。彼はインディに、翌日アビーへ連れて行き、そこで真の演劇を見せると約束するのだった。
翌日、彼らは国立劇場でウィリアム・バトラー・イエイツによる新しい演劇のリハーサルを見学していた。オケイシーはインディに、この演劇こそが、いかにしてアイルランドがイギリスに支配されるようになったかを象徴するものであると説明する。そしてリハーサルの後、イエイツはオケイシーと面会し、オケイシーが演出のため劇場に提出した脚本について意見を交わすことになった。イエイツは、この脚本は登場人物の性格描写に優れているが、国立劇場で扱うには内容が政治的過ぎると指摘する。彼はそれを名誉ある失敗作と称するのだった。帰宅途中で、オケイシーはイエイツの批評に憤慨する。彼はイエイツが現在公演しているような類の作品ではなく、もっと実生活に即した脚本を書きたいと考えていたのだ。
その後、インディはマギーとヌアラと会い、砂浜を散歩した。その晩の仕事中、彼はアイルランドの運命について議論しているショーンとオケイシーに遭遇する。オケイシーはカトリック教徒の力に寄らない、社会主義のアイルランドを求めていたのだ。その翌日、インディとレミはマギーとヌアラと会う。だが、レミがヌアラを連れてどこかへ行ったため、インディはマギーとしばらくの間、2人きりになることができた。そして仕事に戻ったインディは、オケイシーと演劇について話をする。オケイシーは演劇を愛していた。そこでライブが行われていれば、あらゆることが起こりうるからだ。最高潮に達する瞬間には、演劇は命となり、命は演劇となる。するとそこにショーンが現れ、オケイシーは彼に、アイルランド義勇軍を退役したと告げるのだった。また、ショーンはインディに、自分がマギーから泳ぎに誘われたことを伝え、彼らはプールでインディが戦争に参加する理由について話すことになる。ショーン曰く、アイルランドは自由な国でなければならず、一方でイギリス国王に忠誠を誓うようなアイルランド自治だけでは不十分だというのだ。だが話が進むうちにショーンは興奮し、マギーを連れて家に帰るのだった。
その翌日、オケイシーとショーンが歩道で口論となっていた。オケイシーはショーンからそれ以上アイルランド義勇軍の話を聞きたくないという。インディが2人に気づいたのは、ショーンが立ち去り始めたときだった。ショーンはこれ以上マギーに会うなと警告するが、インディはそれを聞こうともせず、次の日もマギーとヌアラと会い、3人で余暇を過ごしていた。すると、ショーンが姿を見せるが、彼は何も言わなかった。そして午後の終わりに、インディは自分は大富豪ではないとマギーに告白する。彼女は放心状態となり、二度と会いたくないと告げるのだった。仕事から家に歩いて帰る途中、インディはショーンと遭遇する。ショーンは彼を倉庫へと引き込み、戦いを挑んできた。群集が集まりはじめ、インディはマギーに事実を告げたことを説明しようとするが、拳打ちを食らってしまう。彼は必死に抵抗するが、群集は拳を振って喧嘩を煽っていた。やがてインディとショーンは休戦を申し合わせ、乱闘騒ぎは終わるのだった。
やがて復活祭後の月曜日が訪れた。インディとレミは既に船に乗るために必要な金を手に入れており、翌日には出発するつもりだった。そして、彼らはヌアラを連れて家へ歩いて帰る途中、郵便局でデモが行われているところを目撃する。アイルランド義勇軍のメンバーが建物を占拠し、自由なアイルランド共和国を求める声明を出していたのだ。彼らはパブへと戻るが、オケイシーは、義勇軍は何も得ようとは思っていないだろうと語る。彼らは理想のために殉教者になろうとしているのだ。マギーは街路へ飛び出し、郵便局でショーンに同胞たちには加わらないよう説得を試みるが、ショーンは聞く耳を持たなかった。義勇軍が近くの建物をさらに2つ占拠すると、イギリス軍が侵入を開始し、バリケードを作り始める。一方、義勇軍は郵便局の屋上にアイルランドの旗を立てるのだった。ついに両者の衝突が始まると、マギーはパブに戻ってきた。彼女はインディたちを郵便局へと連れて行くが、イギリス軍は大砲を使う準備を開始する。もはや彼らにはパブに戻って待つこと以外、なす術はなかった。
戦いは週末まで続き、マギーはショーンの死を確信していた。やがて義勇軍が降伏したという通知が届けられる。インディ、マギー、オケイシーは郵便局へと急ぎ、ショーンがイギリス兵に連行されているところを目撃するのだった。マギーは彼に向かって叫ぶが、ショーンはそれを無視する。その後、イギリス兵たちは刑務所の近くで暴動に参加したメンバーたちの処刑を開始する。インディはショーンを捜すため、マギーをそこへ連れいき、2人はショーンのいる独房へと通された。彼はショーンに、すでに暴動の首謀者の大半が射殺されたと告げ、マギーも、人々は彼らを英雄視し始めていると話す。ショーンは行動を起こした価値があったと感じ、インディのヨーロッパでの幸運を祈るのだった。
翌日、インディとレミは船でロンドンへと出発しようとしていた。オケイシーも彼らの幸運を願うため、見送りに現れる。彼は2人に、自分たちを見守っていてくれと頼んだ。オケイシー曰く、アイルランドは変化を迎えており、彼らが再びこの地を訪れるときには、まったく違う国になっているだろうというのだ。
インディとレミはベルギー軍に入隊するため、ついにロンドンに到着した。入隊審査のとき、インディはアメリカに送還されないかと心配し、アンリ・デファンスという偽名を使う。そしてその日の晩、レミは戦争による未亡人からコーヒーに誘われ、インディは独り取り残されていた。彼も同じように未亡人を見つけ、うまく取り入ろうとするが、失敗してしまう。そこで彼は、年老いたかつての家庭教師シーモアを訪ねることにするのだった。
パディントン駅へ向かうバスの中で、インディはバスの乗務員を務める婦人参政権論者、ヴィッキー・プレンティスと出会った。彼女がツェッペリン飛行船による空襲の後でも冷静さを保っている姿を見て、インディは感動を覚える。彼はヴィッキーとの再会を望み、婦人参政権論者の会合へと向かうのだった。そこで彼はシルビア・パンクハースによる演説に感動し、数人の男から嘲笑を浴びた彼女を助けることになる。そして会合が終わった後、インディとヴィッキーは会場を後にし、一緒にお茶の飲むのだった。会話の中で、2人は共に子供のころ世界中を旅行したという共通点があることに気づき(ヴィッキーの父親は外交官だったのだ)、お互いの外国語に関する幅広い知識を称え合う。そして夜が更けると、インディはヴィッキーをオックスフォードへの旅に誘い、彼女もそれを了承したのだった。
オックスフォードに到着した2人は、さっそくシーモアの家へと向かう。シーモアは、アメリカが参戦していない戦争にインディが参加する必要はないと話し、彼が戦場へ向かうことに猛反対を唱えた。また、インディの父が彼のことをとても心配していると告げ、彼に故郷への手紙を書くよう言いつける。そして、インディが必死に手紙を書いている間、シーモアとヴィッキーは婦人参政権運動の方法論について白熱した議論を繰り広げていた。それでもシーモアはヴィッキーのことを大変気に入り、2人を晩餐会へと誘う。だが、パーティの席でもヴィッキーは無理やり婦人参政権運動の話題へと会話を運び、同席していたウィンストン・チャーチルに大恥をかかせることになるのだった。
インディとヴィッキーはオックスフォードで自転車に乗り、小船に乗り、楽しい日々を過ごしながら、お互いの距離を縮めていった。そして2人は近くに住んでいるヴィッキーの両親を訪ねることになる。彼女の母は獄中でのハンストによって傷を負った婦人参政権論者であり、インディに婦人参政権運動についてさらに多くのことを語ってくれた。その後も2人はさらに多くの時間を共に過ごし、互いに愛の告白を行うと、ロンドンへと帰るのだった。
ロンドンに到着したインディは、レミが2人の召集令状を受け取ったことを知らされる。ヨーロッパを離れることになる前日に、インディとヴィッキーは最後の夕食を共にした。インディはヴィッキーに結婚を申し込む。だが、彼女は結婚すれば記者になるという夢を断念しなければならないといい、彼の申し出を断るのだった。インディはそんなことはないと説得を続けるが、ヴィッキーは頑なに拒否する。ついにインディは怒りと絶望を覚え、その場を立ち去るのだった。
翌日、インディを見送るため、シーモアが駅を訪れていた。続いてレミも、今朝結婚したという知らせを持って到着する。列車が出発したとき、インディは群集の中にヴィッキーの姿を見つけるが、彼女と言葉を交わすことはできなかった。だが、列車が駅を出て行くまで、インディとヴィッキーは互いの目を見詰め合う。こうしてインディとレミは、「あらゆる戦争を終わらせるための戦争」へと身を投じることになるのだった。