9. 偽りの悪魔 Demons of Deception

作品について

このエピソードは「ヤング・インディ・ジョーンズ・クロニクルズ」の第4話として放映された「1916年 9月 ベルダン」と、第22話として放映された「1916年 10月 パリ」を組み合わせ、1つのエピソードとして再編集した作品である。

ベルダン編、パリ編は共に日本でも1992年初頭に「インディ・ジョーンズ 若き日の大冒険」と称したシリーズでテレビ放映されたことがあり(パリ編は特別枠で後日放映だった)、ビデオ、LD-BOX、文庫本が発売されている(いずれも既に絶版)。だが、チャプター9として再編集された後の作品は海外でテレビ放映されたのみであり、現在でもビデオ化はされていない。

なお、ベルダン編とパリ編にそれぞれ含まれていた1990年代の老インディのセクションはカットされている。

ストーリー

1916年 9月 ベルダン Verdun - September 1916

前線での経験でたくましく成長したインディは、故郷アメリカに帰る機会を与えられたにも関わらず、ヨーロッパに留まる決心をしていた。彼はベルダン近辺に配置されたフランス第2陸軍最高司令部の伝令として、フランス軍に参加する。一方、レミは歩兵部隊に割り当てられていた。

フランス軍の将軍たちの間にはいくらかの不和があった。第2陸軍司令官のロベール・ニベル将軍とシャルル・マンジャン将軍は、ドイツ軍に奪われたフォート・ドゥオモンを奪回するための正面攻撃命令を支持している。だが、彼らの上官にあたるアンリ・フィリップ・ペタン将軍は、その案に反対だった。兵員の供給が不足しており、数が足りないのだ。しかし、彼の意見はフランス軍最高司令官、ジョセフ・ジャスキー・ジョッフル将軍によって押さえつけられていた。ジョッフル将軍は戦争の早期決着を求める政治家と民衆の双方から圧力を受けていたのである。

インディはバーク大佐に攻撃命令を届けるべく、前線へと送られる。しかし、通信線が断絶したため、フランス軍による砲撃が終わるまで攻撃は開始されなかった。歩兵たちによる突撃が開始されるが、援護射撃が行われなかったため、彼らはドイツ兵による迎撃と機銃掃射によって虐殺されることになる。結局、領土を得ることはできず、フランス軍はこの戦いで600名の兵士を無駄に失ったのだった。インディは前線からの知らせを持って夜遅くに司令部に帰還する。その報告は優雅な環境で夕食をとっている将軍たちのもとへ届けられた。ニベルは作戦の結果に怒り狂う。一方、インディと他の伝令たちは、まず第一に戦争が行われている理由を理解しようと務めるが、満足のいく回答が得られるはずもなく、ただすべての出来事に対してうんざりするのだった。

レミはインディを信頼し、前線に戻ることが怖いと打ち明けるが、インディはそれを拒否すれば銃殺隊によって処刑されるだろうと告げ、彼をなんとか説得する。その後、インディは前線にメッセージを届ける途中、ドイツ軍の複翼機による攻撃を受けた。彼は爆弾によってバイクから吹き飛ばされ、敵の戦闘機も彼が死んだと思い、去っていく。そして司令本部に戻ると、すべての伝令たちにドイツ語を話せるかという質問がなされていた。インディが話せると答えると、彼は速やかにドイツ軍へのスパイ任務を命じられるのだった。

その晩、インディは無人の荒野を這い進み、ドイツ軍の地下司令室の外側で内部の会話が聞き取れる場所についていた。彼はそこで、ドイツ軍が2基のビッグ・バーサと呼ばれる大型曲射砲を持っていることを突き止める。彼はそれ以上の情報を得る前に敵に発見されてしまうが、辛うじて逃走することができた。インディはバークに報告を行い、ニベルのもとへ連れて行かれる。だが、ニベルはインディの報告を信用せず、攻撃準備を命じるのだった。ペタンがインディの報告について確認すべきだと主張し、ニベルと口論になるが、ニベルは彼を無視したのである。

翌朝、インディは歩兵部隊が前線に向かって出発しているところを目撃する。レミもその中の1人だった。2人はこれが生きて顔を合わせる最後の機会になるかもしれないと考え、言葉を交わす。そのころ、ペタンは上空からの偵察によってインディの報告が真実であることを突き止めていた。彼はニベルに攻撃の中止を要求するが、ニベルはジョッフルの指揮下にあるため、その権限はないと答えるだけだった。そのためペタンは自ら動くことを決め、攻撃の中止を命じる書簡を前線へと送る。だが、それを知ったジョッフルは怒り心頭だった。彼は前線のバーク大佐に電話をかけ、攻撃の続行を命じる。しかし、バークは書面による命令を受けたため、それを撤回するには別の書面による命令が必要だと答えるのだった。ジョッフルは即座に命令書を書き、インディにそれを前線へ届けるよう命じる。ジョッフルは自分が受けている圧力についてペタンに説明するが、ペタンにとってそれは不愉快なものでしかなかった。

前線へ向かう途中、見覚えのある曲射砲に悩まされたインディは、ある決意を固める。彼はオートバイのクラッシュを装い、攻撃命令を告げる書簡を破棄したのだ。インディのしたことは誰にも気づかれることなく、数百人の兵士の命が助かったのだった。

1916年 10月 パリ Paris - October 1916

2週間の休暇を得て前線を離れたインディとレミは、「ソフトで甘い類の冒険」を求めてパリに到着した。レミはこの街で一番の売春宿を知っており、そこにインディを連れて行きたがっていたのだ。しかし、インディは父の友人であるレビ教授夫妻を訪ねなければならず、レミとは翌日に会う約束をして別れるのだった。

レビ教授の家では、夫人がインディにしてもらうつもりの仕事を丸一週間分、大量に用意していた。しかし、それらはすべてことごとくつまらない仕事であり、彼は逃げ出す口実を考える羽目になる。だがその夜、軍事担当次官を歓迎するレセプションに夫妻と同席することだけは避けられなかった。その会場で、インディは1人の女性がすべての参加者の目を釘付けにしながら部屋に入ってくるところを目撃する。彼は、その女性がエキゾチックなダンサー、悪名高きマタ・ハリであることを知らされた。参加している上流階級の人々の間では、彼女が実際に恥ずべき人間であるのかどうか議論が分かれている。インディはうまくマタ・ハリに紹介してもらうと、その後、彼女に従って個室へ行き、そこで会話を始めるのだった。そこでインディが彼女のダンスを見たことがあると偽ると、マタ・ハリは彼を今晩の夕食へと誘う。しかし、時間になっても彼女は現れず、インディは彼女の部屋で1人で待つことになった。そして待ちわびたインディは階段を上がり、ロビーで自分に疑わしい目を向ける男の姿を確認するのだった。

翌朝、マタ・ハリが戻ってインディが長椅子で寝ているところを見つけると、男はまだロビーにいた。彼女はインディを起こし、朝食のためルームサービスを呼ぶ。そして、2人の関係は一気に進み、そのまま愛し合うのだった。その後、マタ・ハリはインディが戦争の恐怖に動じていないように見えると語り、より安全なアフリカ戦線に行くべきだと助言する。そして午後になると、彼らは散歩に出かけるが、2人は尾行されていることに気づいていなかった。マタ・ハリはインディに、休暇中は戦争のことを忘れるよう努力すべきだと話す。彼は愛していると答えた。その後、彼らは数名の芸術家たちと会い、マタ・ハリは、常に人々の話題に上るような何かを作りたいのだと語る。それこそが彼女がダンスをしている理由なのだ。インディは彼女と共に今夜を過ごしたいと考えていたが、マタ・ハリはディナー・パーティに出席しなければならないという。2人はパーティの後に会うことを申し合わせるのだった。

その後、インディがレミと会う約束のため喫茶店へと向かうと、レミは2人の売春婦を連れて待っていた。インディは遅れたことを謝り、自由に動くことが難しい状況だと説明する。レミたちはインディが恋していることを直感するのだった。その晩、インディはマタ・ハリを待つため、彼女のホテルの部屋を訪れた。そこで彼は、他の男たちと一緒に写った彼女の写真や、裕福な伯爵からの贈り物である、美しい彫刻がなされた銀製の宝石箱を見つける。夜明けに彼女がようやく戻ると、インディは混乱のあまり、彼女に一晩中誰と一緒にいたのかを問い詰めるのだった。2人は知り合ってからまだ48時間しか経っておらず、そのため彼女はインディが理不尽な態度をとるようになったのだと考えていた。マタ・ハリはインディを静め、そして激しく愛し合うのだった。

その後、マタ・ハリは維持費が掛かりすぎることを理由に、別荘から出て行かなければならなくなったことをインディに告げる。彼女は出かける用事があったが、使用人が倉庫内の所有品の整理を行うところを監視しなければならないため、インディについて来てほしいと頼むのだった。彼らは所有品の整理を始めるが、インディはそこでマタ・ハリの古い衣装を見つけ、本当は一度も彼女のダンスを見たことがないと白状する。彼女は着替え、インディのために極めてエロチックなダンスを踊ると、ベッドの上でそれを完了させた。その後、彼女は用事に出かけ、インディを運送業者に預ける。2人は晩に会う約束をするのだった。

運送屋はインディをホテルまで送ってくれたが、彼はまたすぐにマタ・ハリに会いたくなった。彼は化粧台の上に住所の書かれた紙がおいてあるのを見つけ、マタ・ハリを探しに行くが、彼女が別の男と食事をしている姿を目撃することになる。そして彼らが食事を終えると、インディは2人の後を付けるが、彼もまた別の人物に尾行されていることに気づいていなかなかった。やがて彼らはパリでも日の当たらない地区へと移動し、そこでマタ・ハリは連れの紳士をアパートへと招待する。インディは建物の脇から窓へ登り、部屋の中を監視していた。だが、2人がキスする姿を目撃した彼はショックで足場を失い、真下のゴミの中に落ちてしまう。起き上がったインディは尾行者を発見し、彼に襲い掛かるが、すぐにもう1人の男が姿を現し、彼は逮捕されてしまうのだった。

警察本部でインディは大きなトラブルに見舞われる。警官たちは彼の入隊証にある偽名と年齢について尋問し、インディをスパイではないかと疑った。さらに彼らはマタ・ハリと共に何をしていたのかと質問し、インディは戦争のことについて話をしていたと答える。状況がまった理解できないインディは警官たちに何がどうなっているのか尋ねるが、誰も答えてはくれなかった。彼らはこれ以上マタ・ハリに近づくなと警告し、インディの休暇が取り消されたことを告げる。彼には部隊へ戻されるまで、24時間の猶予が与えられたのだった。

インディはマタ・ハリのホテルの部屋へ行き、激怒して何が起こったのかと問い詰める。彼女は当局が自分にスパイの疑いを抱いていようといまいと関係なく、上層部にいる友人が助けになってくれるだろうと話すのだった。だが、インディは自分が利用されたと思い込んでおり、2人は口論となる。マタ・ハリは、実際に自分たちの関係に何が起こっているのかを理解するには、まだインディは若すぎると語った。そして彼は、翌朝には前線に戻らなければならないと告げる。彼女は和らぎ、心から悲しそうな様子で、インディに今晩は一緒にてほしいと頼むのだった。そして翌朝、彼はマタ・ハリが起きる前に目を覚ますと、制服に着替え、部隊へと戻っていったのである。

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