このエピソードは「ヤング・インディ・ジョーンズ・クロニクルズ」の第21話として放映された「1910年 1月 ベナレス」と、第20話として放映された「1910年 3月 北京」を組み合わせ、1つのエピソードとして再編集した作品である。シリーズ再編後は基本的にタイムラインに沿った順番でチャプター番号が振られているが、現時点で発表されている時代設定によると、当エピソードは1910年の初頭であり、同年晩夏に位置するはずのチャプター4と順序が逆になっている。ただし、劇中には何年何月かを表す描写が一切ないため、時代設定が変更されている可能性もある。
北京編は日本でも1992年初頭に「インディ・ジョーンズ 若き日の大冒険」と称したシリーズでテレビ放映されたことがあり、ビデオ、LD-BOX、文庫本が発売されている(いずれも既に絶版)。だが、ベナレス編および再編集によってチャプター5となった後の作品は海外でテレビ放映されたのみであり、現在でもビデオ化はされていない。
なお、ベナレス編と北京編にそれぞれ含まれていた1990年代の老インディのセクションは再編集の際にすべてカットされている。
ジョーンズ一家はガンジス川沿いのベナレスに到着し、そこで国立ヒンズー大学に滞在することになる。ある日の午後、インディ少年は幾何学を勉強していると思わせつつ、街を見学するためこっそりと大学を抜け出した。そこで数人の子供たちが広場で遊んでいるところを見かけたインディは、彼らから仲間に加わるよう勧められる。彼らは野球をしているように見えたが、実際にはクリケットをしていた。少年の1人はクリシュナムルティであると自己紹介し、インディに野球とは何かと尋ねる。彼は少年たちに野球を教えるが、なかなかコツを覚えてくれなかった。しばらくすると、シーモアがインディを探しにやってくる。彼は文化交流に励んでいたのだと説明するが、さすがに彼女もその話を完全には信じてくれないのだった。
その晩、一家はアニー・ベサントと神智学協会による歓迎会に出席する。その席でシーモアは、彼らが自由恋愛と社会主義を説く言い習わしを支持しなかった。だが、ジョーンズ教授は彼女の主張に反して、彼らも女性の権利を熱心に説いているのだと訴える。そして彼はインディにも、神智学はあらゆる宗教が共有する共通基盤の探索を目指しているのだと説明するのだった。また歓迎会のなかで、ベサントはチャールズ・リードビーターを紹介する。するとリードビーターは自己紹介のなかで新世界の師、メシアを発見したと告げ、若きクリシュナムルティを紹介するのだった。だが、シーモアは感心せず、その夜遅くにベンサトとの議論を開始する。リードビーターは自分の本の写しを1部シーモアに渡し、2人は翌日お茶をする計画を立てるのだった。
お茶の席でシーモアはベサントに、リードビーターと彼の雰囲気や展望について質問する。だが、ベサントは彼の言葉に信頼をおいていた。一方、インディはクリシュナムルティが瞑想を行っている姿を見て、それを真似しようとしていた。ベンサトはシーモアに、物ごと事に対して心を開き続けようとすることが大切だと告げる。そしてリードビーターは彼女に神智学の文献を示すのだった。だがシーモアは、彼の主張にまだ懐疑的あるという。すると彼はシーモアに、あなたは一度も悪魔を見たことがないとしても、その存在を信じているはずだと説くのだった。
外では、クリシュナムルティが瞑想を終え、インディを連れて自転車で出かけようとしていた。その途中、彼らは神とは何かについて議論し、神の存在を意識した宗教がいかに多いかを語り合う。そして、クリシュナムルティはインディにブッダのことを教え、2人はガンジス川沿いでヒンズー教の葬儀を見学するのだった。やがて彼らが神智学協会の本部に戻ると、ベサントとシーモアはまだ話を続けていた。シーモアは先走った誤解について謝罪し、外へインディを探しに行く。そして庭を探していたシーモアは、シカゴから来たという若きフーベルト・フォン・フックと遭遇するのだった。フーベルトは彼女に、ベサントの誤解について説明する。リードビーターがクリシュナムリティと共に現われさえしなければ、いまごろはベサントが新世界の師になっていたはずだというのだ。彼は、リードビートが著書の中で将来の展望について嘘をついているとし、それを証明してみせるというのだった。
一方、インディとクリシュナムルティは、市場で泣いている女性を見かけた。彼女の腕には死んだ子供が抱かれている。クリシュナムルティは一言も声をかけず、ほとんど触れることもなく、彼女を慰めることができたのだった。そのころ、シーモアはリードビーターの部屋に忍び込み、机の中をあさって彼の本の初期の原稿を発見した。するとリードビーターが入ってきて、彼女は捕まってしまう。だがシーモアは彼に、詐欺罪で告発し、正体を暴露すると告げるのだった。リードビーターは好きにしろと言う。シーモアは原稿を持ってベサントのところへ行くが、彼女はそれを見ようとしなかった。彼女はリードビーターを心から信じており、彼こそが自分の必要とするすべてなのだという。やがてシーモアが帰ろうとすると、少年たちが戻ってきた。インディはクリシュナムルティに土産としてタイ・カッブのベースボール・カードを渡し、お返しにビンに入ったガンジス川の水をもらう。そしてクリシュナムルティは彼に、神智学協会は自分たちを神へと導く人物を探しているが、それは皆が自分のためにしなければならないことなのだと告げた。どんな宗教に属するものでも、神とは哀れみと愛を意味する存在なのだ。
ジョーンズ一家は、インディの父ヘンリーが大学の教師や通訳たちと共に働いている北京に到着した。そこでジョーンズ夫人とシーモアは、インディを連れて中国観光を行うことにする。ヘンリーは妻の健康を気にしていたが、アンナは大丈夫だと答えるのだった。彼らは案内役のリーと共に出発する。
列車の中でシーモアがインディに中国の歴史を教えていたとき、インディは彼らの座席を伺う怪しい中国人がいることに気づいた。だが、その男はインディに見られていることに気づくと、どこかへ消えてしまう。彼らはまず仏教の寺を訪れ、次に万里の長城を見学した。その後、彼らはボートに乗り、アンナとシーモアは孔子の出生地を見学できないかと相談する。リーは大変な長旅になるというが、彼らは興味津々だった。また、シーモアがインディに先ほど教えたことについて質問すると、インディは歴史を学ぶよりもその国の言葉や文化を学ぶ方が重要ではないかと意見する。そのとき、彼は先ほどの不審者らしき男を再び発見し、リーに教えた。リーもおそらく同一人物だろうという。インディは父が言っていたことを思い出し、彼は外国人を嫌う革命家の1人ではないかと考えるのだった。そして晩になり、リーがアンナとシーモアに中国哲学を教えていると、インディはまたしても例の男らしき人物を目撃する。だが、彼はそのことを誰にも言わず黙っているのだった。
翌日、彼らは出かけるために馬車を借りた。運転手のアー・ピンは片言の英語を話せる中国人である。そして旅の途中、リーはインディに中国語を伝授し、言葉の意味を変えてしまう語尾変化の重要性を教えるのだった。このときインディは頭痛がすると訴えるが、たいしたことはないと言われてしまう。その後、リーはアンナとシーモアに、片言英語の使用は品位が欠けていると思うと告げた。そして大人たちがいなくなったとき、インディは例の不審な男が馬車の周辺を伺っていることに気づく。すると男はアーピンにリーが探していると言い、馬車を盗もうとした。しかし、インディは馬車の馬を解き放ち、男の逃亡を防ぐことに成功する。リーは男を脅し、彼を連れて行った。このとき彼はインディに、他の2人にはこのことは黙っておくようにと告げる。一方、アー・ピンは騙されたと知って面目を失っていた。同時に彼は、馬を逃がしたのは正しい判断だったとしてインディを褒め、大人たちに釈明する必要はないと告げる。その後、彼らは新しい馬を調達し、旅を続けたのだった。
彼らが馬車で田舎町を進むにつれ、インディは徐々に体調を崩していき、ついには高熱を発するようになった。上空は嵐雲に覆われ始め、彼らは近くの大使館へと急ぐことにする。しかし雨は降り続け、インディの体調も悪化していった。やがて彼らは川にたどり着き、そこを横断しなければならない状況となる。だが、中間地点で馬が怯えて逃走してしまい、カートが横転してしまった。彼らはなんとか岸へとたどり着くが、荷物がすべて下流へ流されてしまう。彼らは雨の中を進み、ようやく農家を見つけるのだった。
農家の家族は彼らを暖かく迎え入れ、インディの体を乾かし、暖めてくれた。中国人家族によると、一番近いアメリカ人医師は大使館にいるが、そこに行くには3日掛かるという。しかし、中国人医師であれば近くにいるというのだ。だが、アンナは地元の医師を信用していなかった。そして翌日、リーは彼らに、この農家は貧しいが、インディの体調が良くなるまで喜んで滞在させてくれるそうだと伝える。歓待は中国人にとって非常に重要な概念なのである。しかし、インディの体調は悪化し続けた。彼らは何とか馬車のカートを修理したが、インディはとても旅に出られる状態ではない。そこでアー・ピンとシーモアが医者を呼ぶため、アメリカ大使館へと出発することになった。インディは徐々に精神を錯乱させ、母に自分も幼いころに死んだ妹スージーと同じ運命を辿るのかと尋ねる。彼女はそんなことはないと告げるのだった。
その翌日、ジョーンズ一家は、中国人家族の母親がロバに乗った男と口論しているところを目撃した。だが、インディが激しい発作を起こしたことで口論は中断される。リーによれば、アメリカ人医師が到着するまであと2日だった。その夜、中国人家族たちはインディのために必死に祈りを捧げる。そしてアンナは、息子を死なせないために中国人医師を呼ぶことを決めたのだった。医師は翌日到着し、インディに針治療を行うと告げる。針に怯え錯乱したインディは発狂状態となり、母を困らせた。中国人の母親もインディを慰めようとする。アンナも治療の間、絶えず息子の手を握り締め、医師を信用するよう言い聞かすのだった。針を刺すとき、ウェン・チ=イウ医師は処置について説明し、リーがそれを翻訳する。医師の説明によると、インディの体力がもてば、回復するだろうということだった。そのときシーモアがジェームズ・モートン医師を連れて到着する。モートンはウェン・チ=イウと会えたことに感激した。彼によれば、ウェンはこの地方で数少ない本物の医者だというのだ。モートンはインディが腸チフスを患っていたのだろうと推測するが、彼は既に快方に向かっていた。そしてさらに良い知らせが届く。アー・ピンが川に流されたジョーンズ一家の荷物を見つけてきてくれたのだ。
インディは次第に体力を回復させ、中国人の子供たちとダイヤモンド・ゲームをしながら彼らの言葉を学べるようになった。そして数日後、ロバに乗った男が再び現われる。リーによると、彼らの父親がロバに乗った男から金を借り、その際に土地を担保にしたというのだ。返済の期日は既に過ぎているが、彼らには返す金がないのである。アンナは感謝の気持ちから返済を引き受けたいと申し出るが、リーの説明によると、それは中国の慣習によって父親の面目を失わせることになるという。しかし、彼女は一家の歓待に対して大きな借りがあると言い、中国人の父親に金を渡すのだった。そして、父親は取立人にその金を支払い、問題は解決する。さらに、アンナは中国人家族のために鶏を何羽か購入し、次の目的地へと向かう前に皆で小さな宴を開いたのだった。