3. 恋人たちの危機 The Perils of Cupid

作品について

このエピソードは「ヤング・インディ・ジョーンズ・クロニクルズ」の第25話として放映された「1908年 5月 フィレンツェ」と、第15話として放映された「1908年 11月 ウィーン」を組み合わせ、1つのエピソードとして再編集した作品である。シリーズ再編後は基本的にタイムラインに沿った順番でチャプター番号が振られているが、チャプター2と3は例外であり、正式なタイムラインでは3の前半(フィレンツェ編)、2の前半(パリ編)、3の後半(ウィーン編)、2の後半(英領東アフリカ編)の順となっている。ただし、劇中には何年何月かを表す描写が一切ないため、時代設定が変更されている可能性もある。

ウィーン編は日本でも1992年初頭に「インディ・ジョーンズ 若き日の大冒険」と称したシリーズでテレビ放映されたことがあり、ビデオ、LD-BOX、文庫本が発売されている(いずれも既に絶版)。だが、フィレンツェ編および再編集によってチャプター3となった後の作品は海外でテレビ放映されたのみであり(フィレンツェ編はアメリカでも未放映)、現在でもビデオ化はされていない。

なお、フィレンツェ編とウィーン編にそれぞれ含まれていた1990年代の老インディのセクションは再編集の際にすべてカットされている。

あらすじ

1908年 5月 フィレンツェ Florence - May 1908

インディとその家族はイタリアのフィレンツェへと旅し、そこでレアーレ教授夫妻と共に滞在することになった。彼らはジャコモ・プッチーニが作曲し、指揮を行うオペラを鑑賞する。インディの母アンナは、オペラのラブ・ストーリーや美しい歌声にすっかり魅了されてしまった。そしてインディさえもがオペラを楽しみ、愛とはこのオペラで描かれているものと同じように力強いものなのかと思い始める。公演の後、インディが父と共にプッチーニの楽屋を訪れると、彼は顔の上にタオルをおいて休んでいた。レアーレ夫人はプッチーニをディナー・パーティに誘うが、彼は疲労が溜まっていると答える。だが、インディの母を紹介されると、プッチーニはその美しさに即座に魅了され、誘いを受けて光栄だと告げるのだった。

パーティの席で、インディはプッチーニにいかにしてオペラを描いたのかと尋ねる。プッチーニは次々とノートに描いていくのだと答えた。またインディが、母が泣くほど彼のオペラに感動したことを告げると、プッチーニ曰く、それは彼女が大きな愛を理解していることを意味するのだという。インディはプッチーニに、父が講演のためローマで過ごす1週間、自分たちはフィレンツェに滞在するだろうと伝えた。さらに彼は、物理学の法則、特に引力の法則について研究していることを話す。彼は翌日、ガリレオのように実験を行うため、ピサに行く予定だった。偶然にもピサはプッチーニの育った場所の近くであり、彼はインディたちを案内すると申し出るのだった。

翌日、インディの父がローマに向けて出発したとき、インディはシーモアと共に物理学の研究を続けていた。ほどなくしてプッチーニが車で到着し、彼らを乗せてピサへと出発する。インディが彼のモーターで動く自動車を賞賛すると、プッチーニは初めて自走式自動車発明したのはヘンリー・フォードではなくレオナルド・ダビンチであると説明した。やがて彼らはピサに到着し、インディとシーモアは重さの異なる2つの鉄球を持ってピサの斜塔を登るのだった。シーモアはインディに、2つの鉄球を同時に落とした場合、どちらが先に地面に到達するかと質問する。インディは重いほうが先に落ちるだろうと答えた。だがシーモアは、それはアリストテレスが考えたことと同じであると言い、一方でダビンチは2つの鉄球の密度が同じであるため、それらは同時に地面に到達するだろうと考えたのだと説明する。インディは鉄球を同時に落とし、同時に地面に落下することを確認することで、ダビンチの説を証明したのだった。

2人が実験に興じている間、プッチーニはアンナに彼女自身の人生のことについて尋ねていた。彼は自分がいかにして愛と美に関するオペラを描く運命にあると悟ったかを彼女に聞かせる。しかし彼曰く、芸術家が創造するものは美に近い存在であり、美そのものではないのだ。プッチーニはさらに続け、彼が自分の結婚に関して抱いている問題をアンナに告げるのだった。その夜、インディの母はプッチーニから大きな花束を受け取る。彼女は夫に手紙を書き、それを発送したのだった。

そして数日後、彼らはプッチーニの新しいオペラ作品「蝶々婦人」のリハーサルを見学し、プッチーニと歌手の1人との間で口論が行われているところを目撃する。プッチーニは歌手だけでは彼の感情を表現し切れないと主張し、女優が必要であると訴えた。彼は「音楽の分かるジョーンズ夫人へ」とサインが書かれたオペラの楽譜を1枚、アンナに差し出す。そしてプッチーニは、明日彼らをフィレンツェに案内して回ると申し出た。その夜、アンナはインディに、音楽がいかに幅広い感情を伝達できる特別な言語であるかを説明するのだった。

その翌日、インディの母はガイド付きでフィレンツェの旅を楽しんでいた。その途中、プッチーニはアンナに対し、自分たちは特別な絆で結ばれているため一緒になるべきだと告白する。しかし、彼女は結婚しており、彼のことは何とも思っていないと答えた。彼らはそれ以上何も言葉を交わさず、アンナは家に帰してほしいと告げるのだった。翌朝の朝食のとき、インディは母の様子を不安に思い、悩み事があるのかと尋ねる。彼女は夫に出した手紙の返事がないことで取り乱しているように見えた。インディは、父は明日の夜には戻ると告げ、母を安心させるのだった。

その日、彼らは自分たちだけで観光に出かけることを決めるが、プッチーニが後をつけていた。シーモアはアンナとプッチーニから離れてインディを案内していたため、アンナとプッチーニは自分たちだけの会話を交わすことができたのだった。彼はアンナに謝罪するが、彼女から離れることはできないと告げる。プッチーニはアンナから自分の情熱に新しい活力を得たため、ぜひとも彼女と一緒に働きたいと考えていたのである。アンナは彼に対する自分の感情について非常に困惑しており、独りにしてほしいと告げるのだった。すると、何らかの異変に気づいたインディが割って入ってきた。プッチーニはアンナに、晩にボタニ・ガーデンで会ってくれるよう頼む。彼女は断るが、彼は来てくれるまで待つというのだ。

その晩、インディの母はインディとシーモアを残して散歩に出て行った。彼女は庭でプッチーニと会い、2人で熱烈なキスを交わしてしまう。彼らはフィレンツェのいたるところを散策して夜を過ごし、プッチーニの公演が行われているオペラ・ハウスへと戻った。そして公演が大成功に終わると、彼はアンナを家に送り届けた。このときシーモアは窓を覆い、2人がキスする姿を視界から隠すのだった。アンナが入ってくると、シーモアは彼女と対面し、ジョーンズ教授が戻り次第、フィレンツェを発ってパリに向かうつもりだと告げる。アンナは分かったと答えるが、彼女は明らかにフィレンツェに留まることを考えていた。

その翌日、アンナが買い物をしている間、インディとシーモアは科学博物館を訪問していた。だがインディは、母が父と一緒にいるときとは違う、何か奇妙な行動をとっていることに気づいていたのである。このとき彼は、父が母に手紙を書いてくれることを切望していた。そして望遠鏡を使って下の街路を眺めていたインディは、母がプッチーニと共に昼食をとっている姿を目撃する。プッチーニはアンナにジョーンズ教授との離婚を迫っていたのだ。彼女はまだ早すぎると告げるが、彼はヘンリーを乗せた列車の発車時刻が夜中に迫っていると主張する。アンナは錯乱し、彼から走り去るのだった。

その夜、インディは母に今朝の「買い物」について聞き、プッチーニを見かけなかったかと質問する。彼女は買い物中に彼と遭遇したと答えた。そしてインディが寝ると、アンナは泣き始める。シーモアは彼女を慰めようとするが、彼女はプッチーニに対していかに困惑しているかを訴えるのだった。アンナはドアの向こうでインディが聞き耳を立てているなか、プッチーニが自分を妻として連れて行きたがっていることを打ち明ける。彼女はプッチーニを愛していると告白するが、シーモアは、情熱は常に最初がもっとも輝かしいときであると告げ、そしてプッチーニには自分のためにすべてを放棄するよう彼女に迫る権利などないのだと警告した。アンナは未だ自分の夫を愛しており、ヘンリーやインディから別れることなど考えたくもなかった。しかし、彼女はプッチーニと一緒にいると、どうしても興奮してしまうのだ。

しかしその夜、ヘンリーを乗せた列車が到着する時間になると、アンナはさっそく駅に向かい、プッチーニを通り過ぎて偉大な夫のところへと歩み寄った。彼女は夫に、彼が不在の間どれだけ寂しかったかと告げ、ずっと一緒にいたいと訴える。それを見たプッチーニは悲嘆に暮れ、その場から歩き去るのだった。

1908年 11月 ウィーン Vienna - November 1908

ジョーンズ教授はウィーンで開催される第1回心理分析学会議に出席するためオーストリアを訪れていた。その間、家族はアメリカ大使館に滞在することになる。インディはこの都市の上流階級の子供たちと共に乗馬のレッスンを受けており、その中にはフランツ・フェルディナント大公の娘、ゾフィー王女の姿も見えた。彼女がレッスン中に帽子を落としたとき、インディはそれを拾って彼女に手渡すが、彼の曲芸は教官からの叱責を買ってしまう。その後、インディは馬を降り、ゾフィーに自己紹介するのだった。

ゾフィーはインディを公園内の散歩に誘い、シーモアや彼女自身の家庭教師エミリーも同伴する。その後、彼らは高級ホテルで会食を行い、インディとゾフィーはホテル内の温室の散歩へと出て行った。そこで外を見た2人は、人々が氷結した湖でスケートを楽しんでいる姿を見かける。ゾフィーがスケートをしたことがないと言うと、インディは彼女にぜひ挑戦してみるよう勧めるのだった。しかし、インディがゾフィーにスケートの滑り方を教えていると、エミリーが怒りくるって駆け寄り、彼女を連れ帰ってしまった。その後、インディは大きな災難に見舞われることになる。事実を聞かされたジョーンズ教授が息子に激怒し、乗馬レッスンを辞めさせてしまったのだ。しかし、母はやや寛容だった。アンナはインディに、王室には多くの敵がいること、そしてインディたちのしたことはゾフィーにとって極めて危険な行為であることを説明する。彼女は別の友人を作るべきだと言うが、インディはゾフィーの代わりになる女の子は世界中捜しても他にないと答えるのだった。

その翌日、シーモアはインディが勉強中にゾフィーへの謝罪の手紙を書いているのを見つける。彼女はインディに詩、特にバイロンとシェリーの作品について教え始めた。このときインディは、自分が恋をしているのかもしれないと思うようになっていたのだ。そして次の日、彼のもとにゾフィーから、彼女もインディと共に過ごした時間について感謝しているという返事が届けられた。インディは心を奮い立たせ、彼女への贈り物を探してこの一日を過ごすことになる。そして一軒目で、さっそく彼は完璧な品物を見つけた。それは内部に2つのアイス・スケート・フィギュアが入った小さなガラス球である。しかし、それは余りにも高価だった。インディは諦めて街を歩き続け、詐欺師が人を騙しているところを見かける。このとき彼は詐欺の手口を見破り、それを被害者に教えることができた。すると被害者の女性はインディに感謝し、お礼にいくらかのお金をくれたのだった。彼は店へと戻り、そのお金でガラス球を購入する。だが、ゾフィーにそれを届けるため宮殿へ向かったインディは、入り口で警備兵に追い払われてしまうのだった。

その晩、ジョーンズ一家はカール・ユング、アルフレッド・アドラー、ジークムント・フロイトらと夕食会を開き、人間本来の性質における性欲の果たす役割について議論していた。インディは彼らに愛について質問する。3人の学者たちは完全な意見の一致を見なかったが、フロイトは愛を否定しない一方でそれを大声で叫ぶべきではないと説明するのだった。

その夜、インディは大使館をこっそりと抜け出し、宮殿へと向かう。彼は再び警備兵に見つかるが、大公と話をするまで帰らないと言い張るのだった。彼は仕方なく大公の前へと連れられていく。インディは大公に、大人になったらゾフィーと結婚したいと告白し、翌朝ウィーンを発つ前に彼女に別れを告げさせてほしいと要求した。大公はインディの決意を賞賛するが、彼の願いを拒否する。大公は従者に馬車を用意させ、インディを大使館に送り届けるよう命じるのだった。

馬車はインディを降ろすと宮殿へと戻っていったが、彼は密かに荷台に乗り込み、隠れていた。そして宮殿の馬小屋で彼は馬車から脱出し、宮殿の中へと入っていく。インディは警備兵を回避してホールに忍び込み、無口なウエイターを利用して秘密の通路を発見すると、ゾフィーの部屋へとたどり着いたのだった。インディと再会したゾフィーは大喜びし、自分の写真の入ったロケットを手渡す。インディはガラス球を贈り、彼女に愛の告白をするのだった。2人はささやかなキスを交わし、インディは別れを告げる。彼はバルコニーの下に降り、ゾフィーが手を振って別れを惜しむなか、こっそりと宮殿の庭へと出て行ったのだった。

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